串揚げは肉を美味しく食べる究極のレシピ

 

串揚げと言えば肉や魚、野菜などさまざまな素材が持つ美味しさを、一品ずつ味わえることが魅力の料理です。しかし、ここでは「肉」にスポットを当てて、衣をつけた串揚げがいかに肉を美味しく食べることに向いているかを徹底解説します。

空腹の方には申し訳ないくらい、読むだけで串揚げを食べたくなること間違いなしの記事です。

 

1・衣は肉の美味しさを守ってくれる

肉をフライにした時のあの美味しさ、それは肉本体のジューシーさとサクサクの衣がそろって初めて生まれる究極の味わいです。

「肉自体の品質が良ければ、素揚げでも美味しいでしょう」と、思う方は以下のデータを見てください。ここから豚肉に小麦粉、卵、パン粉を付けて揚げたいわゆるフライ=串揚げと、素揚げにしたものを比較します。

どちらも同じ油、同じ温度で100gの肉を揚げますが、温度が150℃になるように注意しています。

1-1・衣は肉汁を守ってジューシーな仕上がりを約束してくれる!
揚げ上がった時重量を測ると、衣が付いた方は83gに、素揚げは66gになっていました。素揚げの方が重量が減っているのは水分が飛んだこともありますが、美味しさの源である「肉汁」も流れ出ているからです。

一方衣は肉汁をしっかり守ったまま、肉の美味しさをキープしています。これは食べてみれば違いはすぐ分かります。衣がある方はうまみがたっぷりで肉のジューシーさがあり、素揚げもそれだけ食べればそれなりには美味しいのですが、衣をつけたものには遠く及ばないほどパサついています。

1-2・衣があるから肉は柔らかく仕上がる!
試食した時わかることですが、衣がある肉と素揚げでは柔らかさにも大きく差がありました。硬さを計測すると素揚げしたものは25%も硬いことがわかりました。

肉類は高温になると繊維が縮んで固くなる性質を持っています。しかし肉を包んでいる小麦粉とパン粉がそれを緩和してくれます。特に小麦粉のデンプン質は肉に直接高温が伝わることを防いでくれます。素揚げはブレーキが無いので一気に肉の内部まで高温に達してしまいますが、衣は肉の内部に緩やかに熱を伝えて、柔らかさをそのままに、しかししっかり調理してくれていたのです。

2・衣自体の美味しさも串揚げの魅力

美味しく揚がった串揚げは、衣自体がサクサクしていて肉のしっとり感を引き立ててくれます。衣は卵と小麦粉、パン粉で出来ていてもともと水分を持っています。高温の油に入れた時に一気に水分が蒸発して、衣の内部に空洞が出来上がり、その空洞がサクサクの食感を生むのです。

さらに、衣の中のたんぱく質と炭水化物は、熱によって糖とアミノ酸分解されて香ばしく変化します。これは「メイラード反応」と呼ばれるもので、玉ねぎをブラウンに炒めることでうまみが増したり、パンを焼いた時表面がキツネ色になって香ばしくなったりするのと同じです。

ちょっと難しい話になってしまいましたが、パンや唐揚げ、フライなどがキツネ色にこんがり加熱されているのは美味しい状態、と誰もが経験的に知っていますよね。

3・パン粉と油にも店ごとにさまざまな工夫がある

3-1・パン粉へのこだわり
パン粉と一口に言ってもさまざまな種類があります。食パンとして食べるものはその単体が美味しく感じるように、バターや脱脂粉乳などを混ぜ込んでありますが、串揚げやとんかつに使われるパン粉は肉のうまみを引き立たせるためによけいな味付けがされていないものが好まれます。

串揚げ職人はパン粉の糖分にも着目します。糖分が多いほどキツネ色が濃くなりますから(前述のメイラード反応が進みやすい)見た目にも味にも大きく影響するのです。

3-2・油の選択も重要
油の選択も店によってさまざまです。せっかく材料や衣にこだわっても、油が悪ければ仕上がりがしつこくなったり、サクサク感が出なかったり、嫌な香りが出たりしますから油選びは非常に重要です。

・ラード…ビタミンB1が多く神経障害や食欲不振に効果があります。コクがあることと植物性の油より酸化しにくいことから揚げ物を扱う店ではよく使われます。融点が27℃から40℃と低めなので使いやすいのもメリットです。

・菜種油…日本で一番使われている種類です(キャノーラ油も菜種油)。固まりにくくてコシが強いので揚げ物に向いています。カラっと仕上がるのも利点です。風味が軽くて淡泊なので食材の味を邪魔しません。

・胡麻油…香りやコクがあって、仕上がりの色も程よいキツネ色にしやすいことから、揚げ物やでよく使用されます。単体だとキレが悪くサクサク感を殺してしまう場合もあるので、ブレンドして使う店もあります。

・大豆油…世界的に使用が多い植物油です。特有のうまみとコクがあるので飲食店で広く使われています。ビタミンEが豊富です。

4・串揚げは素材、衣、油、温度管理、全ての結集で美味しく仕上がる

ここまで細かいことを書いてきたようですが、実はこれらは串揚げの技術のほんの一部分でしかありません。油やパン粉のブレンド、食品への下味の付け方、素材のカットの仕方や大きさの決め方など、あらゆる要素が結集して、あの「肉汁たっぷりでジューシーなサクッと美味しい串揚げ」が生み出されるのです。

福岡県春日市にある「串揚げ 朔屋」では素材や油、衣にもとことんこだわり、一品ずつ丁寧に揚げています。肉だけでなく、魚介や野菜も土地のものにこだわっていますので、自慢の串揚げをご堪能ください。

お問い合わせ